Klystron集束電磁石電源種類および 保守/交換作業
99年4月 道園
内容
1. 電源のタイプおよび構成
2. 不良かどうかの見極め
3. 実際の交換作業
1. 電源のタイプおよび構成 KEKBで使用する58台のクライストロンの集束には電磁石を用いています.その電磁石に使用する電源には主として3タイプがあります.
a. サムウエイ製の電源コントローラ(電源は菊水製)(番号No.1-No.51)(47台使用,2台予備)
(構成):すべて菊水電子のスイッチング型電源(PAKシリーズ)を使用している.電源のコネクタにはパワーポールを採用し,交換の際もパワーポールがついた形で交換する.
A筐体に設置されているコントローラはデジタル型7ch.
b. 旧ポジトロンで使用していた菊水製の電源(8台)(6台使用,2台予備)
(構成):旧型の電源(PALシリーズ)と,スイッチング電源(PAKシリーズ)の混成..A筐体に設置されているコントローラはアナログ型6chのもので,
(1) 三菱電機製PV3030A3に使用する場合は,5磁石電源+1コアバイアスとして6chすべてをA筐体から制御できるが,
(2) 50MWクライストロンの場合は6磁石+1コアバイアスとなるためA筐体では磁石電源(#1-#6)を管理し,コアバイアス電源は電源単体で使用する.(写真:菊水電子製電源参照)
現在(1999年4月28日)50MWクライストロンをこの構成で使用しているのは,B-7,C-7の2箇所である.
この部分についてはコアバイアス電源の電流の変化はA筐体の電磁石電源コントローラではわからない.
特にIshunt等で落ちる場合は,コアバイアス電源の電流が適切か確認する必要がある.
c. 4セクタで使用している初期型のバラック電源
ここで保守としているのは1のすべて及び2の一部です.
a〜cの違いとしては,以下のように考えてください.
a. はメーターがすべてデジタル,電源ラックが150cm
b. はアナログのインターロック,電源ラックが180cm
c. はメーターがA筐体にない
写真.菊水電子製電源
写真.サムウエイ電源コントローラ
2.不良かどうかの見極め 制御室でクライストロンのHVが落ち,しかもそのステイタスがIcoilだった場合,残念ながら,リモートで復旧させることはできません.自転車で現場までいきA筐体下の電磁石電源リモートコントロールユニットのステータス表示をみてください.
写真.A筐体
写真.リモートコントロールユニット
表示は,赤が異常です.異常の場所を確認してください.
Water:水です.磁石の流量計をみて水が流れているか確認してください.
Temp:磁石の温度です.磁石が熱くなっているか触ってみて,また,電磁石電源のACコントロールユニットの温度表示を確認してください.(70以下なら大丈夫でしょう)
C1-C7:各電源がインターロック値を超えた場合です.対応する電源の電圧電流をリモートコントロールユニット,およびクライストロン裏の電源で確認してください.
ステータス表示は自己保持機能を持っているので,障害が起こったときNGならばそれを保持します.現在,問題なければ,リモートコントロールユニットのリセットスイッチを押してください.それでHVOKとなれば,まずはしばらく様子をみてください.
その際、裏側のファンが回っているか確認してください。ファンが回っていないと、しばらくして再び過熱により止まってしまいます。
図:ファン(サムウエイ製のコントローラに使用されているスイッチング電源)
また、前面のフィルターが目詰まりしていることもあります。
図:ファン(旧ポジトロンで使用していた菊水製電源)
続けて障害が起こる場合は,次の章を参考にして交換をお願いします.
3.実際の交換作業 ここでは,実際の交換作業の手順を示します.
実際に交換作業を行う前に必ず症状をメモしてください。(後からやろうとすると必ず記憶があやふやな部分が出てきます。)
記録してほしいのは,
リモートコントロール上のエラー表示(C1,temp,water等),電源の状態(電圧はかかっているが電流が流れない等)
A. C1-C7:不良の場合のほとんどは,この事例です.電源の交換を行います.
B. water:水が十分流れている(>10l/min.)場合は流量計の接点不良が考えられます.接点の交換は業者(大洋バルブ)が行います.
C. Temp:温度が正常な場合,磁石に埋め込んでいる熱電対接点の不良が考えられます.磁石には2本の熱電対が埋めてありますので,切り替えを行う必要がありますが,これは,要はんだ付けなので後日の修理となります.
D. その他,まれにリモートコントロールユニット,ACコントロールユニットが故障しているとしか思えない場合があります.それは,人の手で作ったものです.誰にでも間違いはあります.原因が分からない場合は,保守用のものからリモートコントロールユニット,ACコントロールユニット,最悪の場合は,全体の交換が必要となります.
A. 電源交換(標準作業時間60分)
1. 異常の電源を確かめ,その症状をメモする.(後日,修理以来の際に必要)
2. ACコントロールユニットのノンヒューズブレーカをオフする.
写真.ACコントロールユニット
3. 裏側に回り,取り外し必要な電源のケーブル3種類(AC入力(小さなパワーポール),DC出力(大きなパワーポール),コントロール端子)を外す.この時,No.2及びNo.4は並列運転のため2台一組で外す.
写真.コネクタ三箇所を外す.
写真はNo.4電源のためコントロール端子は2箇所ある.
写真.パワーポールの脱着
4. 前面の電源固定レールを外す.
5. 電源をゆっくり前に引き出す.この際,途中引っ掛かりがあるので,電源を上下に傾けながら取り出す.(ケーブルを引っかけないように注意)
この際,特にNo.4電源は2台一組で外すのは重いので2人で作業すること.
写真.電源取り外し.
写真はNo.4電源のため2台一組で取り出している.No.2,No.4以外は不良の電源のみ取り出す.
6. 保守用の電源(C-8付近に2台ある)から,同様に入れ替える電源を取り出す.
7. 交換する電源をはめ込む.この際,ケーブルを引っかけないように注意.
8. 外した3種類のケーブルを取り付ける.
9. 外した電源のスイッチ(前面部)をオンし,電圧つまみを時計周りに回しきる.
10. ACコントロールユニットの電源をオンする.
11. タイマーが働く5分程度の後,リモートコントロールユニットのリセットスイッチを押し,電流が流れること確認.
12. 作業終了.電源不良のものは,玄関に置き,症状を道園に教えてください.
A'電源交換 旧ポジトロン電源の場合(電源の交換はちょっと面倒で疲れます。)
1、2はAに同じ
3. 裏側に回り,取り外しに必要なケーブルをはずす.コントローラ入力等さまざまあるので、油性ペンで番号をケーブルに記入しておくこと。
4以下はAにほぼ同じ。交換電源はC-7とC-8の間の通路にある電源から必要なものをはずして使ってください。
D. ユニット交換(標準作業時間80分) ここでいうユニットとは,@ACコントロールユニット,Aリモートコントロールユニット,B電源も含めた全ての3種類です.いずれの場合も,交換の前に症状をメモしておいてください.(後日の修理依頼に必要)
@ ACコントロールユニット交換
1. 配電盤の電磁石電源のノンヒューズブレーカをオフ.
写真.配電盤
2. ACコントロールユニットのノンヒューズブレーカ上のランプが消えたこと確認.
3. ACコントロール下の電源供給ラインにテスターを当て,電圧かかってないことを確認.
4. 4端子を外す.(RST,およびグラウンド)
5. その他,パワーポール,コントロールケーブルを外す.
6. ACコントロールユニットを取り出す.
7. 予備のコントロールユニットを取り付ける.
8. パワーポールは,同じ色の並びとなるよう取り付ける.
9. AC入力ラインを配線する.(特にグラウンドを間違えないように)
10. 配電盤のノンヒューズブレーカをオンする.
11. ACコントロールユニットのノンヒューズブレーカをオンしてランプが点くこと確認する.
12.リモートコントロールユニットの表示値が
a.クライストロンの設定値と一致しているか
b.(クライストロンの裏にある)電磁石電源の電流電圧と一致しているか
確認します。(どちらかはあっていないと思います。)
その場合は,
c.電流電圧の校正を行う。(クライストロン裏の電源(No.2とNo.4は並列なので電流を足すこと。)の値とトランシーバで照合しながらあわせていくこと。)
d.電流の設定を行う。(クライストロンの仕様電流値)
e.電磁石電源の電流値が設定値,仕様値と同じことを確認する.(校正が正しければ問題ないはず。)
f.インターロック値の設定(電流が+-3A、電圧は+-5V)。
設定は、デジタルメータの右上左上にあるねじで行う。上中央のmin/meas/maxを切り替えることで調整値をしることができる。
専用のファイルに記録しておくこと。
13. 終了.外したACコントロールユニットは,玄関に置き,症状を道園まで連絡してください.
A リモートコントロールユニットの交換
1. LVをオフする.
2. A筐体裏側に回りリモートコントローラに接続しているケーブルを外す.
3. リモートコントローラを固定しているラックネジを外し取り出す.
4. 予備のコントローラを差し込む.
5. ケーブル接続.
6. LVオン.
7. タイマーを待って,電流値をセットする.
8. メーターリレーのインターロック値をセットする.(電圧,電流の±10%)
セットの詳細は添付のメーターリレーの取説参照のこと.
B 電源も含めた全て これは最後の手段です.ただし,保守用に部品が取られている場合は難しくなります.もし,幸いにも電源やコントローラが抜かれていない場合にできるものです.やり方は,@,Aと同じです.
その際、新電源ではNo.7電源用のノイズカットフィルターが付属していないことがあります。その場合は現在取り付いているものを移設してください。(アースをとることを忘れないように。)
図;ノイズカットフィルター