The 25th Linear Accelerator Meeting in Japan, Himeji, Japan, July, 2000
Proceedings of the 25th Linear Accelerator Meeting in Japan, 2000,
p.252-254
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N. Kamikubota and K. Furukawa
High Energy Accelerator Research Organization (KEK)
Oho, Tsukuba, Ibaraki 305-0801, Japan
A web-based system for browsing klystron histories and
statistics has been developed for the KEKB e-/e+ linac.
This system enables linac staffs to investigate
various klystron histories, such as recent trends of ES,
at his/her convenient PC/Mac/console, where a web-browser is available.
This system started in January 2000, and now becomes an inevitable tool
for the linac staffs.
高エネルギー研の電子陽電子入射器(KEKB-Linac)は、 ここ数年KEKB実験のために保守期間を極力短くした運転を続けている。 このような状況で運転の質を落とさないための留意点のひとつに、 約70台のクライストロンの健康状態の管理がある。 おのおののクライストロンのダウン頻度/反射波/高圧(ES)などの情報 (特に月日が経過するにしたがっての変化)は、 クライストロンの短期/中期の保守作業を計画する際の基礎情報となる。
KEKB-Linacの制御システムでは クライストロンの状態変化は履歴ファイルに残っており、 データをグラフ化する汎用ツールやダウンリスト作成プログラムなどが 過去に開発されている。 しかし、 これらのツールは制御システム用計算機(Unix)でのみしか利用できないため 普通の職員には敷居が高く、 多くの職員は作業を制御グループに依頼するのが現実であった。
このような状況をかんがみ、また近年の情報通信環境を考慮して、 クライストロン状態/履歴をWorld-wide-webで与える環境を整備した。 Webを採用することで、 「 誰でも(Webが使える職員なら)、どこでも(居室や自宅でも)、 いつでも(制御グループ職員が居なくても)」 クライストロンの情報が得られるようになった。
KEKB-Linacは、 2.5-GeV Photon Factory ring、 KEKB B-factory rings (8-GeV and 3.5-GeV )、 PF-AR ring などの加速器にビームを供給している。 その制御システムは、 数台のUnix計算機と多様なFront-end1が制御ネットワークで相互接続された構成に なっている[1,2,3,4]。
制御システムには履歴情報記録サブシステムが含まれる[5,6]。 制御機器信号の変動を約1秒の周期で監視し、 変化があったときのみ記録をファイルに残している。 現在klystron、magnet、などが対象で、真空、BPMは準備中である。 履歴サブシステムは元々VME/OS-9ベースのシステムで 1995年当時は全機器が対象であった。 しかし、KEKB計画で新規に導入された PLCなどに接続した機器分が対応できず、現在も順次対応を続けている。
クライストロンの履歴記録もKEKB計画で LOOP22がPLCに置き換わった際に一旦中断した。 1999年夏に VMEベースだった履歴記録プログラムをPC-linux(2台)に移植し、システムを再開 させた[8]。 現時点(2000年6月)では、 1台のクライストロン当り18個の信号(全体では約1200の信号)を 1秒弱の周期で監視している。 履歴ファイルは各クライストロン毎に出来、 全体では3か月で数GBの大きさになる。
本システムの全体構成を図1に示す。 User-interface開発にあたっては、 利用者が使用するweb-browserの種類(NetscapeかI.E.か)や Platform/OS (Unix/LinuxかMacOSかWindowsか)が統一できない点を 考慮し、 表示側はごく普通のhtml3、また サーバー(httpd)側も 標準的なCGI scriptを採用して冒険を避けた4。 このような安全策が効を奏し、 利用出来ないというユーザー報告は聞いていない。
利用の手順は以下のようになる。 利用者は、調査しようとするクライストロン名/信号名/time-windowを指定して サーバー側にサブミットする(図1の1、2)。 この要求を受け取ったサーバー側は、CGI経由で処理プログラム(graph engine または list script)を起動して グラフまたはテキストを作成し(図1の3、4、5)、 結果を利用者のWeb-browserへ返す(図1の6)。
Web-browserに表示されたメインページを図2に示す。 現在このページから調べられるのは、 (a)各クライストロン毎のダウンリスト、 (b)各種信号(Phase, ES, Epulse, Epfn, IpA-Pout, Ipulse, Kly-Pf, Kly-Pb, VSWR, ES-ADC, ok-on-off)の履歴、 (c)全クライストロンの現在値、 (d)全クライストロンのダウン統計(1日当り、週間ごと、月ごと)、 などである。 図3に、結果が表示された画面の例 (KL_23のES履歴)を示す。
サーバー側の開発は、 以前に開発したグラフ化ツール5や処理スクリプトプログラムを組み合わせることで行なった。 ただし、 ダウン統計処理については、 毎朝前日分のダウン統計を処理して結果をファイル化する自動化スクリプトを 新しく書き起こした (このメカニズムは図1には示されていない)。 複数の職員が毎朝「 down-summary yesterday」を閲覧するので、 この仕掛けは全体として計算機の負担を軽減させている。
各種のグラフやダウンリストは、サーバに要求が届いたときに処理が行なわれる。 処理時間(Browserで「 OK」ボタンを押してから結果が表示されるまでの時間)は 対象となるクライストロンの履歴ファイルの大きさや6計算機の負荷状態に依存するが、 数秒から最長1分程度である。 また、 ダウン統計については利用者は自動生成されたファイルをdownloadするだけなので、 一瞬で結果が得られる。
本システムは1998年にテスト版を開発したが、 この時は制御グループ以外には公開しなかった。 クライストロンの履歴取得が1999年夏に再開した(2.1章参照) ことから、2000年1月に実用版を開発して入射器職員等に公開した。 さらに、職員から実際に利用した際の意見を吸い上げ、 2月に改訂を行なって現在に至っている。
表1に、 サーバー(httpd)のログ解析を行なって求めた本システムの利用頻度を示す。 毎日10ー20回程度利用されていることがわかる。 3月に特に利用が多かったのは、 3月の保守期間中に多くの職員が頻繁にクライストロンの 立ち上がり具合いを調べたためと考えられる。
本システムは職員の大多数が共通して知りたいデータを いつでも提供できるが、その一方で多くのユーザーは 自分専用にカスタマイズされた項目や画面を欲しがる傾向がある。 実際に受け付けた例として、 複数のクライストロンの一画面同時表示があげられる。 ユーザーの要求を無制限に受け付けることはマンパワー的に無理があり、 また複数のユーザーの要求が時には相容れないことも起こり得る。 解決策として、 履歴サブシステムを標準化されたAPIを持つデーターサーバーとして独立させ、 既存のスクリプト言語(Visual Basic、 Python、Tcl/tk、SAD など)からも 利用できるよう整備することが考えられる。 カスタム化を希望するユーザーにはこれらの言語で自分専用の画面開発をしてもらう、 という考えである7。 適当なAPIおよび通信プロトコルとしては、 CORBA toolkit [9,10]の利用を 考えている8。 CORBAプロトコルの採用は、 a) 履歴サーバーを物理的に別の計算機に独立させられる(高速化が可能となり、保守が やりやすくなる)、 b) 将来KEKB側で同じAPIを持つ履歴サーバーが整備できれば 履歴表示アプリケーションを共通化出来る (LinacとKEKBの両方の履歴データを同時に扱える、また 表示アプリの開発や保守を一元化出来る)、 などの観点でも望ましい。
一方 入射器運転の視点からは、 クライストロン以外の機器の履歴も同様にWebで閲覧できるよう 求められている。 今のところ真空および電磁石電源で整備を進めている。 実現させるための技術的な問題は無いが、開発には時間がかかっている。
高エネルギー研の電子陽電子入射器では クライストロンの履歴/統計情報をWorld-wide-webで提供する環境を整備し、 2000年1月から利用を開始した。 このサービスの開始により、 職員の誰でも自分が慣れた環境(多くは居室のパソコン)で クライストロンの履歴情報やダウン統計を取り出すことができるようになった。 現在では毎日10ー20件の利用があり、 多くの入射器職員にとって無くてはならないシステムになりつつある。 さらに他の機器への拡張やカスタマイズ可能性のある履歴APIの導入など、 整備を進める予定である。