MOOLS01 特別講演 8月8日 国際会議室 18:00 - 19:00 |
粒子線治療の過去、現在、未来 |
Particle Therapy : Past, Present and Future |
○辻井 博彦(放射線医学総合研究所) |
○Hirohiko Tsujii (National Institute of Radiological Sciences) |
わが国の放射線治療患者数は、がん患者の3人に1人に相当する約24万人であるが、今後さらに増加すると考えられる。放射線治療の原則は、放射線を出来るだけ病巣に限局し、かつ正常組織の障害を低減することで、これは加速器や治療計画装置の進歩に依るところが大きい。因みに、筆者が放射線治療の世界に足を踏み入れた1970-80年代は、例えば上・中咽頭がん治療において、がんは治っても患者は唾液腺障害のため口内乾燥症で苦しむことが多かった。それが今では、こういった後遺症は激減し、がん制御率も格段に向上し、まさに隔世の感がある。 粒子線にはいろいろな種類がある。最も歴史の古いのは中性子線で、他に、パイ中間子線、陽子線、重粒子線(He、Ne、Arなど)があり、いずれも米国で開始された。現在、陽子線と重粒子線が生き残っているが、理由は明瞭で、いずれも体内でブラッグピークを形成し、がん病巣の選択的照射が可能だからである。重粒子線はさらに、ピーク部分の生物効果がX線や陽子線よりも高いので、適応対象が広がり、かつ治療期間の大幅な短縮が可能になった。今後、加速器の小型化と低価格化、および次世代装置の開発に向けて、さらなる努力が求められる。 本講演においては、粒子線治療の歴史、現状、可能性について幅広くお話ししたい。 |