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電子銃(1)   9:00-10:00 FA-1 200keVスピン偏極電子源の開発状況 山本 将博 名古屋大学大学院 理学研究科 高エネルギースピン物理学研究室 次世代リニアコライダーでは、超対称性粒子探索の有力な方法としてスピン偏極電子ビームの利用が想定されている。そこで、我々は、大ピーク電流、マルチバンチ、低エミッタンス電子ビームを生成するための「200keVスピン偏極電子源」の開発を行ってきた。スピン偏極電子は負の電子親和性(NEA)をもつGaAs表面より取出されるが、このNEA状態は非常に汚染に弱く、ごく微量なH2O、CO2等の残留ガスの表面付着により劣化する。そのため、NEAフォトカソード型電子源には、高電界下での「暗電流削減」と、酸化物性残留ガスの分圧を低く抑えた「質の良い超高真空生成」の2つの最先端技術が必要不可欠である。これまでの開発状況と今後の展望について報告する。
FA-2 高い偏極度、量子効率を併せ持つGaAs-GaAsP歪み超格子フォトカソードの開発 西谷 智博 名古屋大学大学院 理学研究科SP研究室 次世代のリニアコライダー(GLC)計画において、超対称性粒子探索に偏極電子ビームは重要な役割を担うことが期待されている。これには、高い偏極度、高い量子効率、マルチバンチビーム生成等の性能が必要とされる。そこで我々は、バンドオフセットの利点に着目したGaAs‐GaAsP歪み超格子フォトカソード開発を始めた。現在までに名古屋大学工学研究科で試作した結晶で偏極度92%、量子効率0.5%という従来のInGaAs-AlGaAs歪み超格子フォトカソードの性能に優るとも劣らぬ性能を達成できた。更に表面電荷制限効果を受けることなくサブナノ秒マルチバンチビームが生成できることも確認できた。
FA-3 高周波電子銃用セシウムテルライドフォトカソードの研究 杉山 陽栄 名古屋大学大学院 工学研究科 材料プロセス工学第5講座 セシウムテルライドをフォトカソードとして効果的に使用するためには、光学的物性を明らかにしていく必要がある。ここでは偏光特性と膜厚特性について述べる。セシウムテルライドの量子効率の偏光依存性の測定において、P偏光照射時の量子効率はS偏光照射時を常に上回り、P偏光で入射角度が60度のとき、量子効率は最大値を取る。量子効率(QE)と反射率(R)の関係をQE∝1−Rと仮定し、測定結果から未知であるセシウムテルライドの光学定数(屈折率、減衰係数)を見積もった。セシウムテルライドの量子効率の膜厚に対する依存性の測定結果においても同様の関係を仮定し、最適膜厚を見積もった。
FA-4 フォトカソードRF電子銃を用いたフェムト秒電子パルスの発生とパルスラジオリシス 楊 金峰 大阪大学 産業科学研究所 産業科学ナノテクノロジーセンター 阪大産研には、量子ビーム誘起した超高速現象の解明のため、新しいS-バンドライナックとレーザーフォトカソードRF電子銃を導入し、RF電子銃を用いたフェムト秒電子パルスの発生を行っている。発生したフェムト秒電子パルスとフェムト秒レーザー光パルスを用いて新しいパルスラジオリシスシステムを開発し、さらにパルスラジオリシスの性能向上のため新しい制御システムを構築し、電子パルスとレーザーとの同期システムの改良も行った。本研究会でRF電子銃を用いたフェムト秒電子パルスの発生とパルスラジオリシスの現状を報告する。
休憩    10:00-10:15 休憩
電子銃(2)   10:15-11:30 FB-1 チタン及びモリブデン表面からの電界放出暗電流の測定 古田 史生 名古屋大学大学院 理学研究科 SP研究室  電子銃、クライストロン、加速管、RF空洞等の高電界デバイスにとって、金属表面からの電界放出暗電流は初期放電や真空悪化、時には真の放電をもたらすなど機器の性能を著しく低下させる原因となりうる。我々はKEKに直流高電界装置を設置しすでにステンレス鋼、銅表面からの暗電流放出メカニズムの解明を目指した研究を実施してきた。さらに最近の実験では、チタン及びモリブデン電極に対し電極間距離を0.5mmにして100MV/m以上の直流高電界を表面に印加したときの暗電流を1nA以下に抑えることができた。このとき電界増倍係数はβ〜40であった。 これらのデータから、@暗電流の大きさは表面処理方法に強く依存すること、A電極材料の二次電子放出係数やイオンスパッタ率が暗電流メカニズムに深く関わっていることを確認できた。これらの研究成果と今後の展望について報告する。
FB-2 熱陰極500MHz-CW電子銃の開発 蒲 越虎 三菱電機(株) 先端技術総合研究所電機部量子装置グループ 環境に優しい殺菌滅菌手段として応用が期待されている大出力電子線加速器を開発しています。そのキーコンポネントである電子銃を開発し、ビーム試験で良好な性能が得られたので、ご報告します。我々は電子ビームエネルギーが5MeV以上、出力が30kW以上のCWモードで電子加速を行うことのできるマクロトロンを開発しています。加速周波数は500MHzを用いるため、位相幅の最適化された500MHzのCW電子銃を開発することは、大出力化を実現するためのポイントでした。開発した電子銃はCPI社製Y845熱陰極を電子源として用い、新たに考案したコンパクトで低損失のRF信号伝送系を用いてカソードグリッド間に60V以上のRF電圧を印加でき、 500MHzにパルス化されたCWの電子ビームを得ることに成功した。
FB-3 SPring-8軟X線自由電子レーザー計画に用いるCeB6電子銃の開発 渡川 和晃 理化学研究所 播磨研究所 電子ビーム光学研究室 SPring-8では、将来のX線FEL利用施設の実現を目指して、軟X線自由電子レーザー計画(SCSS計画)を進めている。本計画では、FELに不可欠である安定した低エミッタンスビームを供給する為に、単結晶の熱カソードを用いた高電圧パルス電子銃の方式を採用した。カソード材料は、電子顕微鏡用に広く使用されている単結晶六ホウ化セリウム(CeB6)を使用する。電子銃の印加電圧は、空間電荷によるエミッタンス増大を低減する為に、500kV(パルス)を目標としている。電子銃の試験装置はほぼ完成しており、現在、電子ビームのエミッタンスを測定すべく、カソードの開発やパルス電源の性能試験などを行っている。本研究会では、低エミッタンス電子銃の開発の現状について報告する。
FB-4 カーボンナノチューブ冷陰極の特性測定 大沢 哲 高エネルギー加速器研究機構 電子陽電子入射器 加速器の電子銃にカーボンナノチューブ冷陰極を用いることを考えており、それに適した陰極調査をしている。特性測定の結果、中には電流密度が1A/cm2を超えるものもあり、実用化も現実味を帯びてきた。特性測定の結果などを報告する。
FB-5 東京大学原子力工学研究施設におけるレーザープラズマ電子加速研究 細貝 知直 東京大学大学院 工学系研究科附属原子力工学研究施設 東京大学大学院工学系研究科付属原子力工学施設では、超短パルス高強度レーザープラズマ相互作用によって100fs以下のパルス幅を持つ相対論的(数十MeV)電子シングルバンチを生成する自己入射型レーザープラズマカソードと呼ばれるレーザープラズマ電子加速の研究を行っている。これまでの研究では、高エネルギー電子の発生はレーザープレパルスの作るプレプラズマの条件に大きく依存し、指向性の良い高エネルギー電子ビーム発生にはレーザープレパルスの制御が必要不可欠であることが明らかになった。研究会では、これまでの研究結果と現状、将来計画を報告する。
休憩    11:30-11:45 休憩
RF       加速構造   11:45-12:30 FC-1 SiCを用いた50-MW級C-band (5712-MHz) RFロードの研究開発 Su Su Win 高エネルギー加速器研究機構 加速器 真空仕様の50-MW級のC-band(5712-MHz)に対応するRFロードは未だに開発されていない。本研究は、筆者が開発したS-band (2856-MHz)のSiCを用いたRFロードの流れを汲むものである。開発の目標として、真空仕様、ピーク入力50-MW級(2.5-usec, 50-pps)で運転できること。および、リニアコライダーに対応可能な量産性の良い構造を開発することである。本論分では、その基本構造と、電磁界のシミュレーション(HFSS)の結果を発表する予定。
FC-2 C-band クライストロン用 コンパクト密閉型変調器電源の大電力試験 稲垣隆宏 理化学研究所 SPring-8 播磨研究所 SPring-8において、軟X線FEL計画(SCSS:SPring-8 Compact SASE Source)が進行している。SCSSで使用されるCバンド50MW級クライストロンをドライブするために、密閉型の変調器電源を開発している。この変調器電源は、全ての回路構成部品を絶縁オイルの中に入れた密閉構造をしており、従来の変調器電源と比較してたいへんコンパクトで、なおかつ信頼性、安定性の高くノイズの少ないものと期待される。2003年3月に第1号機が完成した。クライストロンに繋いで大電力運転試験を行ない、定格の高電圧パルス(-350 kV)が印加されることを確認した。今後、出力波形の調整、長期安定性の確認等の試験を行なってゆく予定である。本発表では、密閉型変調器電源の紹介、及び運転試験の結果について報告する。
FC-3 超純水洗浄の無酸素銅表面に対する影響について 冨沢 宏光 (財)高輝度光科学研究センター  加速器部門 線形加速器グループ  高圧超純水洗浄はニオブ製超伝導空洞の洗浄方法として確立している。SPring-8では低エミッタンス電子ビーム生成のためにフォトカソードRF電子銃装置の開発をしているが、この電子銃空洞を洗浄する方法が問題となっている。そこで、この高圧超純水洗浄が無酸素銅製の加速空洞の洗浄方法として適切であるかどうかを試験した。試験用サンプルとして無酸素銅片(3×4cm)を用意し、水圧を2〜7MPaまで変化させて10秒間同じ位置を洗浄した。これらの洗浄後のサンプル銅片を光学顕微鏡による表面形態観察、およびSPring-8 BL43IRでのフーリエ変換赤外分光装置(FTIR)によ る表面吸着分子分析の両面から、高圧超純水洗浄による表面状態の変化を評価した。表面形態観察の結果から、水圧が5MPa以上では銅表面に10〜100μm程度の抉られたような痕が無数に残っていることがわかった。またジクロロメタン洗浄後にも微量に残留する加工油成分(CH振動吸収としてあらわれる)が、高圧超純水洗浄後にも同程度に検出され、この残留量に対しては洗浄効果のないことがわかった。さらにOH振動吸収がみられ、高圧水の表面近傍への潜り込みが起きている可能性のあることがわかった。結論としてはこの洗浄方法では、綺麗に洗浄した銅の表面はかえって汚染し、傷付くことが判明した。ここでは、主に高圧超純水洗浄による無酸素銅表面に対する効果を表面分析の立場から分析した結果を報告する。
閉会挨拶 12:30-12:40 閉会挨拶
昼食     12:40-14:00 昼食
見学会    14:00-16:30 見学会(J-PARC、原研FEL、東大,)